胃アニサキス症

まとめ

 サバなどの青魚,イカなどの生食後に生じるⅢ型アレルギーを主体とした急性腹症
 CT では胃壁の高度な粘膜下浮腫,腸間膜浮腫,腹水貯留が特徴的
 抗アニサキス抗体の測定や内視鏡による虫体の確認により診断され,内視鏡的に治療される.

 

1.総論

胃アニサキス症はアニサキス幼虫による寄生虫感染症であり,幼虫の寄生した生鮮魚介類を生食することにより発症します.原因となる海鮮魚介類としてはサバやイワシ,アジなどの青魚類やタラ,ホッケ,イカなどが有名です.摂取してから6時間〜12時間程度で比較的急速に発症します.

初感染(過去にアニサキスに感作されていない)時にはアニサキスが刺入した際には,単なる異物に対する局所反応を示すのみですが,再感染(既に感作された個体にアニサキスが侵入)時には主にⅢ型アレルギーを主体とする強い反応が生じます.臨床的に胃アニサキス症として診断されるのはほとんどがこの再感染時に生じている病態と考えてよいでしょう.

 

2.画像診断

急性腹症の鑑別目的に CT が撮影されることがあり,

①広範な胃粘膜下浮腫

②腸間膜浮腫

③腹水貯留

が特徴的な所見です.胃アニサキス症の粘膜下浮腫は比較的広範で非常に強いことから疑うことは可能ですが,同じく著明な胃粘膜下浮腫を示す AGML とは鑑別が必要です.容易ではないことも多いですが,腸間膜や大網の浮腫や腹水貯留などが目立つ時にはどちらかというと胃アニサキス症を疑う根拠になります.

図1: 造影 CT 軸位断 (Axial) 図2: 冠状断像 (Coronal)です.胃体上部−胃角部にかけて大弯側優位に粘膜下層−固有筋層が一緒となって低吸収を示し,高度の壁肥厚(粘膜下浮腫)が認められます.胃体下部大弯では筋層を超えて漿膜下層や大網の脂肪織濃度が淡く上昇しており,炎症が広範囲に広がっていることが分かります.非常に浮腫が強いのがアニサキス症の特徴です.


上部消化管内視鏡検査で胃体部後壁にアニサキスの虫体を認めます.このあと除去されました.
激烈な腹痛症状を訴えることがあり,CT を撮影されることが時々ある疾患のうえ,十分診断可能です.見つけたら診断できるようにしましょう.