まとめ
- 中葉・舌区の無気肺や非特異的炎症の総称として用いられる
- 原因としては非結核性抗酸菌症(NTM)が重要かつ頻度が高い
- 見落としてはいけない原因は気管支結核や悪性腫瘍
1. 歴史・定義
もともとは1948年に Graham が縦隔リンパ節腫大による中葉無気肺を middle lobe syndrome として報告(1)したことがはじまりで,様々な変遷を経て現在では中葉および舌区の無気肺や反復する非特異的炎症の総称として用語が使用されていることが多いようです.
報告によって細かい定義は異なりますが,そもそも症候群なので多様な疾患を含んでいて厳密に定義・診断するのは難しい病態で,中葉や舌区の陰影と容積減少を認めた時は,中葉舌区症候群という病名に無理に当てはめるのではなく,その原因をどう鑑別するかと考えることが重要です.
2. 原因
中葉や舌区は側副換気が貧弱,気管支が細く長い,分岐が鋭角,出生後の発育が悪いなどの理由から無気肺が生じやすいとされています.原因疾患の頻度は報告によって異なりますが,非結核性抗酸菌症や気管支結核などの炎症性変化,副鼻腔気管支症候群,神経内分泌腫瘍(carcinoid としての報告を含む),肺癌などが挙げられます.
中葉・舌区の肺そのものに見られる病理組織学的変化としては気管支拡張症が多いです.
3. 画像所見
「中葉・舌区の無気肺」はその定義上,共通した画像所見といえますが,なかなか全体が無気肺に陥っている症例は多くなく,部分的な含気の低下がほとんどだと思います.その他の画像所見は原因疾患によって様々ですが,非結核性抗酸菌症のCT画像所見としては気管支拡張や小葉中心性粒状影などがあります.
気管支結核や腫瘍が原因となって無気肺を生じている場合があり、これらを見逃さないことが重要ですが、気管支内病変は無気肺によって検出が難しくなっていることも多いので注意が必要です.
4. 参考文献
(1) Postgrad Med. 1948 Jul;4(1):29-34.
この記事へのコメントはありません。