乳腺はホルモン環境によって多彩な変化をきたす臓器であり,組織変化を反映して多様な画像を示します.今回は特に授乳期の乳腺がどんな変化をきたすか,見てみましょう.
1. まとめ
・授乳期乳腺には乳管や小葉の増加が起こり,乳腺は増大する
・超音波やマンモグラフィー,CT,MRI,PET/CT などでこれらを反映した画像の変化が生じるが,生理的な変化と認識することが重要
・背景乳腺の変化により病変の検出力も低下しているので慎重な読影が必要
2. 授乳期乳腺の組織像
乳房は乳腺組織と皮下脂肪,皮膚から成り立っており,乳腺組織は乳房の中にある乳汁を作る器官です.乳腺組織は乳房内の皮下脂肪の内部に存在し,Cooper 靭帯によって支えられています.乳腺組織は主に乳管や小葉,腺房などから構成されており,腺房が集まった小葉で乳汁が産生され,乳管を通って乳頭に分泌されます.授乳期には乳管の増加・拡張と小葉の過形成が起こることによって乳腺は増大し,画像での見え方も変化します.
左図:通常の乳腺
右図:授乳期乳腺 小葉の過形成と乳管の増加・増大が起きる
3. 授乳期乳腺の画像所見
超音波
乳腺の肥厚と均質化,乳管の拡張
マンモグラフィー
乳腺濃度上昇
CT
乳腺腫大,濃度上昇
左図: 非妊娠時の造影CT(2年前,乳頭レベル)
右図: 授乳時の CT (FDG-PET/CT 撮影時)
PET-CT
乳腺への FDG 集積亢進
左図: 非妊娠時 PET-MIP 像
中央: 同一人物の授乳時 PET-MIP 像
右図: 授乳時 FDG-PET/CT fusion 画像
乳腺はホルモンの影響を受け変化の大きい組織です.読影の際には授乳による影響を頭に入れておきましょう.
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