前回の症例の解説です.
胸部単純 X 線写真上は,
正面像:
大動脈弓部外側〜左肺門に重なる陰影(大動脈肺動脈線・AP window の異常突出)
左肺門陰影の濃度上昇
気管の右側偏位
側面像:
retrosternal space の濃度上昇
が認められ,前縦隔腫瘤の存在が疑われます.
胸部 CT では肺動脈主幹部〜左肺動脈に浸潤する前縦隔〜縦隔上部に至る腫瘤が認められます.矢状断でみると,胸部 X 線の側面像の陰影がどのようにして構成されているかわかりますね.
胸部単純 X 線写真で縦隔腫瘍は意外に認識が難しいことがありますが,肺だけでなく縦隔陰影のスクリーニングも必ず行いましょう.
今回の症例に関しては
①肺門陰影の左右差
②気管の偏位
③大動脈肺動脈線〜 AP window (大動脈弓部下縁と左肺動脈に挟まれた領域)
のチェックが診断に結びつきます.
その他にチェックすべき所見としては
④気管分岐角の開大
⑤前接合線・後接合線の偏位・消失
⑥肺門陰影の高さ(通常は左 > 右)
⑦心陰影の拡大
⑧奇静脈食道陥凹
⑨傍椎体線
はスクリーニングで観察すべきポイントです.
肺門陰影は重なりが多く,形態のみではひっかけることが難しいことがありますが,濃度の左右差,高さの異常はひっかけるようにしましょう.過去画像があれば比較も重要です.
胸部単純写真側面像のチェックポイントも沢山ありますが,ここでは
① retrosternal space
② retrocardiac space
のふたつをチェックする癖をつけましょう.
①は胸骨後方,②は心陰影後方の領域でいずれも軟部組織が少なく,側面像では空気濃度として認められますので,この領域に軟部濃度があれば異常です.retrosternal space の軟部影は前縦隔腫瘤を,retrocardiac space の陰影は下葉の異常によって認められることが多いです.必ずチェックする癖をつけましょう.参考までに同じような体型で,retrosternal space が正常な写真を載せます(椎体には多発硬化性転移があり,こちらは異常です).
胸部単純 X 線写真で縦隔陰影を正確に読影できるようになりましょう.
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