形質細胞腫?それとも多発性骨髄腫?

画像診断で時に出会う弧発性骨腫瘤.

鑑別は難しいですが,比較的画像で診断できる可能性のある「形質細胞腫」を鑑別に挙げることは時々あるのではないでしょうか?
そんな時にぼんやりと思い浮かぶ多発性骨髄腫,しっかりと理解して鑑別出来てますか?

単発だから形質細胞腫に決まってるじゃん,というあなた.間違えてますよ.

日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン2013年版 (http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/3_1.html#soron から引用)では形質細胞性腫瘍は下記のように分類されています.

Monoclonal Gammopathy of Undetermined Significance(MGUS)
無症候性骨髄腫Asymptomatic Myeloma(Smouldering Multiple Myeloma)
症候性骨髄腫Multiple Myeloma(Symptomatic)
症候性非分泌型骨髄腫Nonsecretory Myeloma (Symptomatic)
骨の弧立性形質細胞腫Solitary Plasmacytoma of Bone
髄外性形質細胞腫Extramedullary Plasmacytoma
多発性形質細胞腫Multiple Solitary Plasmacytoma
形質細胞白血病Plasma Cell Leukemia

 

少し多いので画像診断で出会う疾患に絞りましょう.

症候性骨髄腫Multiple Myeloma(Symptomatic)
・血清and / or 尿にM 蛋白を検出
・骨髄におけるクローナルな形質細胞の増加(10%以上)または形質細胞腫
・臓器障害*の存在
症候性非分泌型骨髄腫Nonsecretory Myeloma (Symptomatic)
・血清および尿にM 蛋白を検出しない(免疫固定法により)
・骨髄におけるクローナルな形質細胞の比率≧10%または形質細胞腫
・臓器障害*の存在
骨の弧立性形質細胞腫Solitary Plasmacytoma of Bone
・血清and / or 尿にM 蛋白を検出しない(少量を検出することがある)
・クローナルな形質細胞の増加によるただ1 カ所の骨破壊
・正常骨髄
・病変部以外は正常な全身骨所見(X 線およびMRI)
・臓器障害*がないこと
髄外性形質細胞腫Extramedullary Plasmacytoma
・血清and / or 尿にM 蛋白を検出しない(少量を検出することがある)
・クローナルな形質細胞による髄外腫瘤
・正常骨髄
・正常な全身骨所見
・臓器障害*がないこと
多発性形質細胞腫Multiple Solitary Plasmacytoma
・血清and / or 尿にM 蛋白を検出しない(少量を検出することがある)
・クローナルな形質細胞による1 カ所以上の骨破壊または髄外腫瘤
・正常骨髄
・正常な全身骨所見
・臓器障害*がないこと

と上記のように記載されています.
少し長く,多発性形質細胞腫の定義が少し分かりにくいので原文の IMWG 2013 ( 2003 Jun;121(5):749-57.) を参照して表にまとめると下記のようになります.

形質細胞腫か骨髄腫を決めるのは多発しているかどうかではなく,M 蛋白や骨髄中の形質細胞増殖,臓器障害の有無が二つを区別していることがわかります.
そもそも多発性骨髄腫が形質細胞の腫瘍性増殖と M 蛋白の血清・尿中増加により特徴づけられる疾患ですので,形質細胞の腫瘍性増殖は骨に孤立して存在しても,骨髄中でも,髄外でもよいと言うことです.M 蛋白増加と臓器障害がない形質細胞性腫瘍の場合にはいずれかの形質細胞腫となり,これらの所見があると骨髄腫という病名に変化するわけですね.

さて,お気付きでしょうか?
M 蛋白増加も臓器障害も画像診断ではありません(骨髄浸潤に関しては間接的に画像診断することが可能ですが).つまり骨腫瘤を発見した段階では形質細胞腫か骨髄腫かは分からないということです.もちろんこの時点で M 蛋白増加や臓器障害が明らかであればレポートに多発性骨髄腫疑いと記載してもよいと思いますが,単発か多発で決まるものではないということです.

単発骨腫瘤でも M 蛋白増加や臓器障害があれば骨髄腫
多発骨腫瘤でも M 蛋白増加と臓器障害がどちらもなければ多発性形質細胞腫
というパターンがあります.

今後,形質細胞腫っぽい腫瘤を見つけても 「形質細胞腫/多発性骨髄腫疑い」と記載することにします.

参考文献
(1) 日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 2013年版 http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/3_1.html#soron
(2)  2003 Jun;121(5):749-57.

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